白壁土蔵群観光EV

 

倉吉市商工会議所とのプロジェクトです。

倉吉市は、江戸時代、幕府によって取り潰しを受けた大阪の豪商淀屋再興の祖である牧田家の遺産の残る街。その中心に位置する「白壁土蔵群(通称:赤瓦)」は、白壁となまこ壁、赤い瓦が美しい倉吉市の観光名所です。EVはこの江戸時代の面影の残る白壁土蔵群をゆっくりと散策するための観光ガイドとして企画しました。排気ガスを排出しない電気自動車で、なおかつ白壁土蔵群の雰囲気に調和する外観となるようデザインを進めていったプロジェクトです。
 
スタイリングははじめから他の電気自動車の目指す未来的なスタイルではなく、古都の観光地らしく、人力車をイメージしたスタイリングでデザインを進め、いままでに見たことのないような不思議なイメージでまとめてみました。
(ちなみに開発中は「電力車」と呼んでいました)
 
このEVは現在「れとろん」の愛称で白壁土蔵群を巡っています。
倉吉市にお立ち寄りの際は、是非ともこの電気自動車で白壁土蔵群を散策してみてください。
 
 
このスタイリングを実現するには、現在ある普通の自動車では車体構造の再認可が必要となり、ナンバーを取るのに莫大な費用がかかってしまうので、昔ながらのラダーフレームを持っているジムニーをベース車両に選定、後の改造申請に必要となる設計書の作成のため、このジムニーを3次元CADのRhinoceroceで車体丸ごとモデリングし、これを素にバッテリーの搭載位置やボディの内部構造などを設計するという、さながら自動車メーカーのようなやり方で開発を進めていきました。
 
その後、ベース車のジムニーを購入し、ボディをすべて撤去した上で、エンジンを外して電気モーターを組み込み、フッドと荷室にバッテリーを16個搭載して電気で走るように改造しました。
レトロなボディは旧知のプロモデラーにお願いしてFRPで作成してもらい、公道を走るためのさまざまなパーツを設計・制作して1年がかりで完成させました。
 
完成してからも大変で、公道を走れるようにするため、私有地で走行テストやブレーキテストを行って性能証明書を作成したり、百科事典くらいある強度計算書と申請書類を作成したりして、陸運局に出向いて改造についての説明を行い書類を提出するという自動車メーカーと同じ手順を踏んで、公道走行可能な車両としての認可をいただきました。
認可が降りると通常のクルマのように車検を受け、実車が申請書どおりになっているかを検査してもらい、公道走行の証としてのナンバープレートを発行してもらい、ようやく「観光電気自動車を走らせる」というプロジェクト本来の目的にたどり着くことができました。
 
構想から3年という長い長い開発期間でしたが、改造とはいえナンバープレートを付けた自動車を設計開発するという、得難い経験をさせていただいたEVプロジェクトのメンバー、特にサンパックの森社長さんには本当に感謝しております。